[とむらいの鐘(トーテン・グロッケ)]
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/04 09:25 UTC 版)
「紅世の徒」の記事における「[とむらいの鐘(トーテン・グロッケ)]」の解説
古く強大な“紅世の王”、“棺の織手”アシズを中心に組織され、16世紀初頭にフレイムヘイズ兵団との『大戦』の結果消失した当時最大級の“紅世の徒”の集団。理由は“徒”によって異なるが、フレイムヘイズとの戦闘を前提に置く戦闘軍団。その総員は万を超え、ヨーロッパのブロッケン山に要塞を築き、拠点としていた。アシズの掲げる『壮挙』の実現を目的としており、[とむらいの鐘(トーテン・グロッケ)]の名は、世に新しい理を作る際に、古い理に対してとむらいの鐘を送るという意味を持つ。 都市オストローデにおいて、敵対する“紅世の徒”の組織や、彼らを一網打尽すべく集ったフレイムヘイズたちとの戦いの中で秘法『都喰らい』を発動させ、一度に生じた物としては史上空前の規模の歪みを生み出した。その18年後の16世紀初頭には『壮挙』を為すために必要不可欠な宝具である『小夜啼鳥(ナハティガル)』の争奪戦を所有者の“徒”とフレイムヘイズ兵団との間で起こして奪取したことで、その5日後に『大戦』の決戦へと流れ込んだ。 彼らの『都喰らい』及び『壮挙』は“紅世”で静観を決め込んでいた“徒”にも衝撃を与え、これを阻止すべく多数のフレイムヘイズが生み出され、さらに本来一人一党の討ち手達が、フレイムヘイズ兵団と呼べるまでの集団となる原因となった。特に後者の時期に「乱造」されたフレイムヘイズは、「ゾフィーの子供たち」と俗称される。 ブロッケン山、オストローデ(オステローデ)ともに同名の土地が現ドイツ中部に実在する。「ゾフィーの子供たち」にゲルマン系の姓名が多いのは、同地方の出身者が多いからと思われる(物語のオストローデ市は都市ごと“存在の力”を喰われたので、人間同様「最初から存在しなかった事」となる筈であり、現在のオストローデ市と同一ではない可能性がある)。 “棺の織手(ひつぎのおりて)”アシズ[Asiz] 男性の“紅世の王”。炎の色は青。I巻から秘法『都喰らい』を行った“徒”として語られ、X巻およびS巻『キープセイク』に登場。カムシンには「青き棺の天使」と形容された。[とむらいの鐘]の首領であり、構成員からは「主」と呼ばれている。 仮面をつけた蒼い天使の姿をしている。 思慮深く温厚で、他者に対してあまりにも優し過ぎる性格。それは在り方がかつての己に似た、マティルダとアラストールに対しても向けられていた。 「神聖不可知の完全な輪」である“冥奥の環”固有の自在法として、『清なる棺』という、周囲の因果から閉鎖された強力な凝固空間を作り出す能力を持つ。優れた自在師であり、同時に強大な統御力を持つ当時の乱獲者の中では最強の“王”。自在法『都喰らい』を編み出し、無数のトーチに『鍵の糸』という仕掛けを使うことで『都喰らい』を行い、都市丸ごとの“存在の力”を得るとともに使いこなすことで自身を強大な存在にした。また、その“存在の力”を『九垓天秤』にも分け与え、強化していた。 本編で直接戦闘したのは一度だけであり、その相手は神威召喚により対象を必滅する存在として顕現したアラストールであったため全く歯が立たなかったが、その強さは『灼眼のシャナの全テ』において作者からアラストールとともに別格と称されている。作中での真正の神に対する立ち位置は「大魔法使い」。 元々は最古のフレイムヘイズの1人として活動していた“王”で、本来の真名は“冥奥の環(めいおうのかん)”。世界のバランスを守るという使命に燃え、契約者の少女『棺の織手』ティスと共に“徒”の組織をいくつも壊滅させた英雄だった。太古の“祭礼の蛇”を『久遠の陥穽』に放逐した戦いには、ティスと共にフレイムヘイズ側として参戦し、イルヤンカたちと戦った模様。 しかし、契約者ティスが人間の裏切りで殺された際に彼女への愛情に気づき、彼女の喪失を恐れて『清なる棺』で亡骸の崩壊を防ぎ、同時に周りの人間を無数喰らい“存在の力”を得ながら、ティスという「心通じた場所」を起点として自身の紅世との繋がりを代償に自身を強引にこの世に再召喚、世界のバランスを脅かす“徒”と同様にこの世に顕現した。 以後は、自身と契約したフレイムヘイズの称号である“棺の織手”を名乗り、フレイムヘイズの使命を放棄してティスを蘇らせるための方法を求め、フレイムヘイズと敵対しながら世界を旅する。その彷徨の中、後に『九垓天秤(くがいてんびん)』と呼ばれることになる九人の強大な“王”が付き従ったのを皮切りに、次々とその在り方に惹かれた“徒”らが集い(“徒”は「欲望の肯定」こそを全てとするため、己の望みを断固として目指すアシズの生き様に感銘を受けた)、[とむらいの鐘(トーテン・グロッケ)]を組織するに至る。 契約者ティスを蘇らせることは叶わなかったが、彼女の最後の願いであるアシズとティスの子を作り出す為に、存在の『分解』と『定着』の自在式を刻んだ金属板(『大命詩篇』の断篇)と宝具『小夜啼鳥(ナハティガル)』の力を用い、自身と愛するティスの存在を融合させた『両界の嗣子』を生み出そうとした。これは結局のところアシズ個人の目的でしかなかったのだが、それを叶えるためにひたすら突き進むアシズに感銘を受けた“王”たちが、個々の理由からそれを助けようと付き従い始めた。その中でモレクが、組織の指針とすべくこれに『壮挙』という名前と『両界にとって革新的な試み』という大義名分を与えたことにより、当時の人間社会に倦み疲れていた“徒”達がこれに惹かれて集まり、様々な理由・大義・名目をまとい、最終的にはアシズですらどうにも出来ないほど尊大で抽象的なものとして捉えられていた(事実、『壮挙』の内容はともかく、その意味するところを知る者は組織内にも少なく、『九垓天秤』らがその遂行に助力していたのは内容や意味のどうこう以前に「主たるアシズの目的だから」という理由が大きい)。 [とむらいの鐘]が強大な組織となったのは彼が出会った“徒”を誰も見捨てなかったからであり、癖の強い『九垓天秤』全員から慕われているところからもその人格面での優しさを伺える。愛し合う者同士が共に生きる事を望んだが叶わなかった過去を持つためか、マティルダとアラストールが愛し合っている事を知ると、世界のバランスを守るために死ぬことを承知で自身を討滅しようとする二人に同情し、二人の間にも子供である『両界の嗣子』を作らせ仲間にしようと説得するが、最終的に“天破壌砕”で顕現したアラストールにより討滅された。 ユダヤ教・キリスト教で堕天使アザゼルの別名をもつ、カナンで崇拝されたアシズという同名の砂漠の神が存在する。
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